患者さまをみていると、「いつもからだに力が入っている」「力が抜けない」という方が多いと感じます。
「力が抜けない」ことそのものを主訴として治療にいらっしゃる方もいるくらいです。
「肩の力を抜いてください」
そう言われて、すぐに力を抜けますか?
抜いているつもりなのに、
「まだ力が入っていますよ」と言われた経験がある方もいるかもしれません。
実は、力を抜くことは、思っているほど簡単ではありません。
からだは、意識するより先に自分を守っている
気温や気候が大きく変化すると、からだはその変化に合わせようとします。
たとえば寒さを感じると、からだは熱を逃がさないように皮膚の血管を縮めたり、筋肉を細かく収縮させて熱をつくったりします。
また、肩をすくめたり、からだを縮こませたりすることもあります。
でも、「寒いから肩に力を入れよう」と考えてそうしているわけではありません。
私たちが意識するより先に、からだが自分を守るために反応しています。
こうした小さな緊張が続いていると、いつの間にかそれが「いつもの状態」になってしまうことがあります。
「力が抜けた状態」を知らなければ、抜きようがない
以前、肩こりの強い患者さまを施術したときのことです。
施術後、ご本人はそれほど大きな変化を感じていないようでした。
帰宅後にお子さんが、お母さんを見てひと言。
「お母さん、首が長くなったみたい」
鏡を見てみると、施術前に上がっていた肩が下がっていることに気づいたそうです。
ご本人にとっては、肩が上がっている状態が「いつもの姿」になっていたのでしょう。
自分では気づいていなくても、からだには力が入っていることがあります。
だからまずは、「力が入っている」ことに気づくこと。
力が抜けた状態を知らなければ、抜きようがありません。
力を抜けないなら、一度「入れて」みる
「力を抜こう」としてもうまくいかないときは、反対に、一度意識して力を入れてみる方法があります。
たとえば肩なら、両肩を耳に近づけるように、ぐっと持ち上げてみる。
数秒たったら、ストンと下ろします。

力を入れていたときと、ゆるめたあとの違いを感じてみてください。
筋肉にいったん力を入れてからゆるめる「漸進的筋弛緩法」という方法があります。医療や心理の分野でも用いられている方法で、緊張と弛緩の違いをからだで感じながら、少しずつ力を抜いていきます。
「力を抜かなきゃ」と頑張るよりも、一度力を入れてみることで、「ゆるむって、こういう感じなんだ」と気づきやすくなることがあります。
「痛い」「怖い」でも、からだには力が入る
寒さを感じたときと同じように、痛みや怖さ、不安を感じたときにも、からだには無意識に力が入ります。
「痛そう」「怖い」「何をされるんだろう」
そんなときに、からだがキュッと緊張するのも、自分を守るための自然な反応です。
だからみうら堂では、鍼もできるだけ痛みや怖さを感じずに受けていただけることを大切にしています。
からだが身構えずにいられるほうが、鍼灸による影響が内側まで届きやすいと考えているからです。
東洋医学では、からだの内側を「気」がめぐっていると考えます。
その巡りが整ってくると、手足が温かくなったり、皮膚の緊張がやわらいだり、張っていたお腹がやわらかくなったりして、からだも自然とゆるんでいきます。
施術中にもよく、
「内側の巡りがよくなると、それだけでからだが一段階ゆるむんですよ」
とお話ししています。
鍼灸を受けたあとに、
「なんか力が抜けたみたい」
とおっしゃる患者さまもよくいらっしゃいます。
力を入れることは、からだを守るために必要なこと。
そして、必要がなくなったら、またゆるめること。
がんばる力ではなく、ゆるむ力を取り戻す。
そんな考え方もあることを知っていただけたらうれしいです。
🌿 ゆるみからのひとこと

あ、力はいってた。
